
子供たちによく質問されることの一つに、「牛は何歳ぐらいまで生きれるの?」というのがあります。ほとんどの質問はすっと答えることができるのですが、この質問だけは答えに困ってしまいます。牛は生まれてから2〜3ヶ月程度はお母さんのおっぱいを飲んで育ちます。その後草や濃厚飼料を食べて、約1歳から最初の人工授精が始まります。人間の体つきでいうと中学3年生程度です。中3で妊娠というと人間の世界だと大騒ぎになりますが、人間でも体つきはもうほとんど大人です。約10カ月の妊娠期間を経て牛がちょうど2歳の時に初めての分娩を行います。人間だとこのとき大学に入学したぐらいでしょう。生んだその日から搾乳が始まり、分娩後約3ヶ月で次の妊娠をさせます。そしてまた次の年にはお産をする…。これを毎年毎年繰り返していくわけです。
昔に比べて牛は体も大きくなり、牛乳もたくさん出るようになりました。ところが、たくさん牛乳を出すことで牛の体は無理をして長く生きることができなくなってしまうのです。昔の酪農家が飼っている牛の中には10産以上の牛(年齢でいったら12,3歳)がいることが珍しくありませんでしたが、今の乳牛では7,8産の牛というのはなかなかお目にかかれません。これは人間が品種改良を行って、たくさん牛乳を絞ってくれる牛を作ってきたからです。牛はペットではありません。家畜なのです。米だって野菜だってみんなが口にする食べ物のほとんどは改良を進めた結果人間が食べやすいような食物になっているのです。
母牛は子牛を生むことで子牛のために牛乳を出します。子牛が健康に大きく育つようにカルシウムやビタミン・脂肪やタンパク質そのほかたくさんの栄養素を含んだ牛乳を出します。カルシウムを出すために骨を削ります。ビタミンを出すことで体の機能が悪くなる牛がいます。脂肪を燃やしてやせ細ります。たんぱく質を出すことで筋肉が落ちます。そうやって子牛のために一生懸命出した牛乳を人間がいただいているのです。体を削って身を削って牛乳を出した牛たちは歩けなくなったり、立てなくなったり、もう妊娠することができなくなったりします。そうやって最後はと畜され、体は肉になってみんなが食べるのです。
テレビで肉食動物が草食動物を襲うシーンがあると「かわいそう」と思う人たちがたくさんいます。うちに来た修学旅行生たちが「この牛、最後は食べられちゃうんだよ」というと「かわいそう」と言う子たちがたくさんいます。この感情は人間が持っている大切な感情の一つだろうと思います。けど、スーパーで売られているパックのお肉を買っていることは、どこかの牧場の牛が殺され肉を切られそれを食べていることに他ならないのです。
人間だけがいろいろな動物や植物の命を奪って生きています。皆さんが今夜食べる晩御飯のメニューにはどんな種類の命が含まれていますか?だから昔の人はご飯を食べる時に言ったのだろうと思います。 「(あなたの命を)いただきます」

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